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2007/03/09 金

毛 (2001.03.12掲載)

【社長のひとり言《Classic》】

こいつに出会い、こいつの一言で人生が変わったなどと、自分の人生に影響を与えた奴って、みんなにもいると思うのだが、俺の場合も数人おる。
今回は、その中の1人でもある、ある男を紹介しよう。
名前はクワバラ君(仮名)。
あだ名は「毒(ドク)」です。
ドクは、とにかくスケールのでかい奴で、どんな困難にも負けず、何事も笑いで吹き飛ばしていた。
心臓に毛が生え、しかもその毛が剛毛でパンチパーマまでかけた・・・、そんな男です。

こんなことがありました。
それは、俺とドクが15歳の時でした。
ドクはものすごくハンサム、床屋に貼ってある写真のモデルのバイトをしたことがあるぐらいハンサムです。
歩いている女の子に声をかければ、100%ひっかかります。
ひっかけた女の子は、共通の友人であるK君(仮名)宅に連れていき、そこで、全ていたします。
ある時、俺がK君(仮名)の家へ遊びに行った時、家の前にはドクのバイクが止まってました。
玄関を開けると、
「うりゃー」
というドクの声が・・・。
何やってるんだろうと思い、K君の部屋を開けると、15歳の少年だった俺にとって信じられない光景が目に飛び込んできました。
全裸の女が自転車の荷台用ロープで縛られ、ドクにベルトでたたかれているではありませんか。
「おう、気持ちがスカッとするぞ、たたいてみるか?」とさわやかに言ってきました。
「い、いや、俺、帰るわ・・・」と断り、帰ろうとすると、
「あら、そこで見ていけばいいだろう、照れちゃって」と言ってきたので、俺は素直に黙って見ていた。
部屋の持ち主であるK君は当然いません。
そうそう、K君は1人暮らしです。

「うりゃー」 バシッ(ベルトで女をたたく音)
「せぃやー」 バシッ(ベルトで女をたたく音)

その女も、なぜか笑っていました。しばらくすると、
「よーし、次はローソク行ってみよう」とドクは言い、ローソクを持ち出しました。
その後、どのくらい続いたのかは、よく覚えていません。ようやく終わると、
「さぁ、今度は3人で風呂に入ろう」と言い出した。
40分後には風呂が沸き、俺はドクと知らない娘の3人で背中を流し合いをしていました。
ちょっぴり、俺のムスコがたくましくなりかけた時、
「何、考えてんだ、いやらしいなぁ・・・」と言ってドクと女は笑っていました。
それだけでもショッキングな15歳だと思いませんか。

でも、もっと凄いことがありました。
それは、15歳の冬でした。
暴走族の集会が終わり、その帰り道でした。
俺とドクは、T沼の近くにある定食屋の駐車場にたどり着きました。
「ここで、夜をあかすか」とドクが言いました。
その定食屋の駐車場には薪がいっぱい置いてあり、その薪をくすねてガソリンをかけ、焚き火をするのが日曜日早朝の日課でした。
俺が立ちションベンをしていると、突然、ドクがバイクのエンジンをかけ、
「この事は誰にも言うなよ、黙って棺おけまで持ってけ」と意味不明なことを叫んで走り去っていった。
後に残された俺が、ふと定食屋を見ると、店の薪小屋から火の手が上がり、その勢いは定食屋に燃え移らんとしていました。
あきらかに家事、いや火事です。
それを見た俺も、次の瞬間にはエンジンをかけ走り出していました。
俺は家には帰らず、そこから1,2分ぐらいの友人I君宅に逃げ込みました。
30分後、消防車のサイレンの音が聞こえ、俺の心臓は破裂しそうでした。
その燃えている定食屋は、不幸にも俺とドクの共通の友人S君の家でもあるのです。
俺は、心配で心配で、ドクとの出会いを恨み始めました。
と、その時、ドンドンと窓をたたく音が・・・。
俺はパクられるのか・・・。いや、火付けは俺じゃない、などと考えていると窓が開き、そこには友人Y君がいた。
「おい、Sの家が火事だってよ、見に行こうぜ」
俺がもっとも近づきたくない場所への誘いの言葉であった。
成り行き上、Y君とI君と俺の3人で定食屋の火事現場を見に行くことになりました。
当然、定食屋がもうもうと燃え上がっている光景は予想がついていたし、ある程度は覚悟を決めて現場に行ったのですが、その火事現場で15歳の少年だった俺は、更にショッキングな光景を目にする事になった。
なんと、地元の消防団にまじり、水の入ったバケツを持ったドクが消防活動を手伝っているではありませんか。

「うりゃー」 バッシャーン(バケツの水をかける音)
「せぃやー」 バッシャーン(バケツの水をかける音)

結局、ドクは捕まりもせず、3ヶ月後、俺とドクと友人S君の3人になった時、ドクはS君に笑いながら言いました。
「おまえん家に火つけたのは、俺とこいつだ、スマン」
あまりにも、さわやか過ぎるドクの笑顔と、人相の悪い俺の顔を見比べた場合、どちらが犯人面だと思いますか・・・。
「火をつけたのは、オマエだろ・・・」とS君は言って、俺を指差しながら笑っていました。
ハッハッハッハ、俺も複雑な気持ちで笑いました。
ウソのようで本当の話しです。

俺とドクは、いつしか互いの仕事とかの影響で、別段、ケンカした訳ではないのですが会わなくなり、そのまま15年ほど経ちました。
ところがです、一昨年末、某TV局の「箱根駅伝を走ったなつかしの名ランナー達」とかいう番組を何気なく見ていたら、40歳も近い男の目にショッキングな映像が飛び込んできたので。
ドクです、テレビにドクが映っているのです。
なんと、ドクの父親が箱根駅伝を走った日本では有名なランナーで、当時の思い出などを家族4人(当然、ドクも含めて)で、ハッハッハッハと笑いながら話しているではないですか。
今でも変わらない笑顔でした。

なんで、今回、このような話しをしたかというと、柏レイソルですよ。
今年の柏レイソルはやりまっせー。
昨年は(優勝まであと1歩という)最後の最後のところまで来た。
優勝するための実力は十分である。
後は、なんだな、精神面だな、ハートだよ。
ドクのように、心臓に毛が生えた強い精神力を持てっていう、まぁ、そのための話よ・・・。